「今日」から学ぶ。

「見て学ぶ」ことの大切さ。 – 「9月9日」から学ぶ。

本日、9月9日(火)。

今年は(閏年なので)366日ありますが、今日はその253日目。
今日も「9月9日」という日から学んでみましょう。

でもその前に、少しだけ昔のことを。

ちょっと昔のことを回想。

そういえば昔、中学生くらいの頃かな。
僕は将来、天文学者になりたいと思っていました。

学校の授業が終わり、部活を終えて、家に帰ると、僕はいつも夜が来るのが楽しみでした。

ご飯を食べたり、風呂に入ったり、学校や塾の宿題を終わらせながら時間を過ごし、やっと夜になると、僕は家のベランダに椅子を持っていき、そこに座ってずっと星を見ていました。

「オリオン座って、形的にはむしろ砂時計座の方がしっくりくるなー」
「夏の大三角って、なんであの3つの星にしたのかなー」
「さそり座のアンタレスって、すごい明るいなー」
「あ、流れ星だ!」

そんなふうに、中学生らしいぼんやりとしたことを考えながら、暗い空の下で星を見ていました。

何か特別なことが起こるわけではないけれども、ただただ煌々と瞬きながら、ただただ東から西に流れていく星を見ることは、何か特別な感情をずっと僕にもたらしていました。

ある日。いつものようにベランダに椅子を持ち出し、星を1時間ほど見ていると、気が付けば両脇には兄と姉も椅子を持ってきて、星を見ていました。5歳上で勉強のできる兄は、たくさん星について教えてくれました。音楽の道を進む姉は、すぐに飽きてました。でもそれでいいんです。すごくいい時間が流れていました。

星を見ることが好きになってくると、どんどん星について知りたいと思いはじめました。月に一度のお小遣いをもらうと、近所の本屋に行って、「天文ガイド」という月刊誌を買い、紙袋に入った雑誌を抱えて、走って帰っていました。「買ったぞ、買っちゃったぞー!」

思いっきり天文に関する専門誌だったので、全然理解できない事柄がたくさん載っていました。でもそれでいいんです。僕はドキドキしながらページをめくっていました。

いつしか、天体望遠鏡を買いたいと思うようになりました。もっと、ちゃんと星を見てみたいなって。親友を誘って、少し遠い町の電気屋まで、自転車をこいで行きました。そこにはたくさんの天体望遠鏡が置いてありました。でも、中学生の僕には、一番安い天体望遠鏡も高すぎました。お小遣いじゃ、ぜんぜん足りませんでした。本当にがっかりしすぎて、うなだれながら、家に帰りました。

それでも毎日、星空を眺め続けてました。ある日、そんな僕を見かねたのか、父が突然言いました。「天体望遠鏡、買おうか?」本当にうれしかった。それから毎日、天体望遠鏡を出しては星を見て、見終わったら箱にピシッとしまい、また次の日になれば天体望遠鏡を出して・・・、そんな日々を繰り返してました。

天体望遠鏡で見たいものを見ることは、思っていた以上に難しかった。でも、苦労して見えたものは、特別でした。

初めて見た、月のクレーター。

初めて見た、木星の衛星。

初めて見た、土星の輪っか。

すべてに感動して、興奮していました。

あれからかなりの年月が経ち、僕は天文学者ではない日常を過ごしていますが、今でも星を見るということはすごく特別なことです。

最近、コロナの影響もあって、なかなか落ち着かない日が続いていますね。でも、またそろそろ、ゆっくりと星を見たい時期になってきました。

そんなこんなを思い出した今日。

今日「9月9日」は、今から約130年前の1892年に天文学者エドワード・エマーソン・バーナードが、木星の5つ目の衛星を発見した日です。

そんな日から、今日は学んでいきましょう。

木星の衛星はいくつ?

さて、今回はまずは木星についてから知っていきましょう。その後、少し掘り下げて、その衛星について見ていきましょう。

木星とは?

宇宙には、1022個(100,0000,0000,0000,0000,0000個)の星があると言われています。果てしない数ですよね。

その中に、僕らの住む地球が属している「太陽系」という星の集団があります。太陽系とは、太陽の周りは公転する星の集まりのことです。

太陽系には、8つの惑星があります。言い換えると、太陽の周りを公転している惑星は8つあります。その8つを、太陽から近い順に並べると、以下のようになります。

  1. 水星
  2. 金星
  3. 地球
  4. 火星
  5. 木星
  6. 土星
  7. 天王星
  8. 海王星

「水金地火木土天海明」と昔はよく聞きましたが、冥王星が太陽系惑星から準惑星に変わったため、最近ではあまり聞かなくなりました。

それはさておき、ここまでをまとめると、木星とは、地球と同じように太陽系に属する惑星なんですね。

さて、そんな木星ですが、外観はこんな感じになっています。

縞模様が特徴的です。

そしてこの木星ですが、地球と異なり大部分が気体でできているのも特徴です。構成としては、水素が約81%ヘリウムが約17%。(その他は、メタン、水蒸気、アンモニアなど。)

ちなみに、木星のように組成として大部分が気体でできている惑星のことを「木星型惑星」と呼びます。

そしてこれとは逆に、大部分が岩石や金属などの固体でできている惑星のことを「地球型惑星」と呼びます。

衛星とは?

さて、この木星ですが、地球と同様に衛星を持っています。

衛星とは、惑星の周りを公転する星のことです。

たとえば地球を見てみると、地球の周りを月が公転しています。約27日でぐるりと1周。つまり、月は地球の衛星ということです。

地球に月という衛星があるように、木星にも衛星があります。

さて、木星にはいくつの衛星があるか知っていますか?

そして、衛星の名前をいくつか言えますか?

木星の衛星について。

結論からいうと、木星には79個の衛星があります。

想像すると、ちょっと怖いですよね。地球でいえば、月が79個あるようなイメージです。月1つで、地球の潮の満ち引きに影響を与えるくらいです。79個もあったら、その影響は結構なものになりそうな気もしますよね。

さて、そんな79個の木星の衛星ですが、特に大きな4つの衛星が有名です。

  1. イオ
  2. エウロパ
  3. ガニメデ
  4. カリスト

この4つは、ガリレオ・ガリレイが発見したため、「ガリレオ衛星」とも呼ばれます。

そしてこの4つの衛星の発見から約280年後、ガリレオ以来はじめての木星の衛星が発見されます。

「9月9日」は、木星の5つ目の衛星が発見された日。

ガリレオが木星の衛星を発見してから約280年後の1892年の9月9日、アメリカの天文学者エドワード・エマーソン・バーナードが5つ目の衛星を発見しました。

発見後しばらくは、「バーナード星」や「ジュピターV」という名前で呼ばれていましたが、その後ギリシャ神話のゼウスの育ての親の名前にちなみ、「アマルテア」と名付けられました。

でもここからは、アマルテアについてではなく、E・E・バーナードに焦点を当ててみましょう。たぶん、ほとんどの人がこの名前を聞いたことがないと思います。だから、なかなか興味が持てないのではとも思います。

でも、なかなか変わった経歴を持っているので、ちょっと見てみましょう。

E・E・バーナードの少し変わった経歴

日本ではあまり馴染みのないエドワード・エマーソン・バーナードですが、観測天文学という学問の世界で数多くの業績を残した人物です。

ですが、特筆すべきはその経歴です。ちょっと変わった天文学者へのなり方をしているんです。

バーナードは、1857年にアメリカのテネシー州(ナッシュビル)で生まれました。でも、生まれる前に父親が亡くなったため、家は貧しく、学校教育をあまり受けられずに育ちました。

そのため、9歳というまだ小さい時に写真家の助手になりました。小さいころから写真が好きだったからです。

写真家の助手として働いている間に、バーナードは天文学に興味を持ちはじめます。そして働き始めてから10年後、19歳の時に天体望遠鏡をはじめて購入しました。

天体望遠鏡で空を観察すること5年、24歳になること、バーナードは2つの彗星を発見しました。その翌年には、さらにもう1つの彗星を発見しました。

次々と新しい彗星を発見するバーナードに、この頃からパトロン(資金援助者)がつくようになります。そしてそのパトロンは、バーナードが新しい彗星を発見するたびに、200ドルの援助金を提供することにしました。バーナードは8個の彗星を発見し、1600ドルの援助金をもらい、それを24歳の時に結婚した妻との新居を建てるのに使いました。

バーナードの天文学の功績は、ナッシュビルのアマチュア天文家の間で有名になっていきました。彼らは寄付を募り、バーナードが大学に入学するための奨学金を集めました。そしてその奨学金のおかげで、バーナードはヴァンダービルト大学に入学することになります。(ちなみにこのヴァンダービルト大学は、グラミン銀行を創設してノーベル平和賞も受賞しているムハマド・ユヌスの出身校でもあります。)

バーナードは、ヴァンダービルト大学を30歳で卒業しました。卒業後、リック天文台で働くことになり、その期間に、木星の5番目の衛星を発見することになるのです。

そしてその後、バーナードが38歳になると、シカゴ大学の教授に就任しました。

過程が貧しかったこともあり9歳で写真家助手になったため、学校教育をほとんど受けられなかったのに、天体望遠鏡ひとつで種々の観測を行い、いくつもの成果を出し、それを支えるパトロンや、応援してくれる仲間が現れ、彼らの力で大学に入学し、最終的には大学教授にまでなる。

なかなか変わった経歴ですよね。

必ずしも目標と計画を立てる必要はないのかもしれない。

バーナードの生涯を見ていると、なんだか感じるものがあります。

昨今では、まず目標を定めて、それを達成するための計画を立て、その計画にそって努力し、そして目標に到達する。そんな流れを作ることが大事という風潮が強いように感じます。

それはそれでもちろんいいのですが、でもバーナードのように、天文学の学者・教授になるためにステップを踏むのではなく、自分が本当にやりたいことを追求して、その結果としてさまざまなものが後からついてくる。そんな生き方もありなのかもしれません。

「見て学ぶ」ということ。

さて、少し自分の話に戻ります。

理科の中でも天体について教えていると、よく「どうやったら覚えられますか?」と聞かれます。

どういうことか尋ねてみると、「星が東から西に流れること」「地球は西から東に自転していること」「星は1時間で15度動くこと」「星は1日では約1度動くこと」などなど、覚えることが多いということのようです。

気持ちは分からなくないけれど、なんだかまた少しずれているなーという感覚になります。

だってそれって、初対面の人の顔をまだ覚えられていないときに、「あの人の顔をまだ覚えられません。目、鼻、口、造形、髪型・・・覚えるものが多すぎます。どうやって覚えたらいいですか?覚えなきゃいけない項目を箇条書きにしてください。」そんなことを聞いているようなものだと思うんです。不必要な分解をしすぎて、全体を見ようとしていないんです。

この例でいえば、「何回も会えばいいんじゃない?」というか、「それ以外にないんじゃない?」。そんな答えになりますが、でも勉強のこととなると違う思考回路になってしまう人が多い。

星の話に戻すと、僕の場合は昔、夜空を毎日のように見ていたので、そのときの絵的なイメージが強くあります。

「星って左から右に流れていってるなー。」

「あ、今自分は南を向いているから、東の空から西の空に流れてるのか。」

「あ、でも実際は、地球が回ってそう見えているだけだから、僕らが西から東に動いているんだなー。」

こんなふうに、星をボケっと見ていて、たまに頭を働かせてみると、上のような想像が働くんです。

「天文」なんて言いますが、要は夜の空に浮かぶ星のことなんです。毎日、僕らの頭の上にある、身近な自然現象なんです。身近にある自然現象であれば、まずはそれを自分の目で見ること。何度も見ること。それが大切なんだと思います。それ以外の方法で理解しようとするのは、勉強を日常から剥がす行為な気がします。学ぶことを楽しむなら、まずは自分の目で見ること。それを大切にしたいところです。

最後に、そのためのおまけを今回は付けておきます。

「星」を楽しむための場所

森と星空のキャンプヴィビレッジ「ツインリンクもてぎ」

栃木県にあるグランピング施設「森と星空のきゃんぴヴィレッジ『ツインリンクもてぎ』」。

グランピングを楽しみながら、星空をのんびり見ることができます。

宇宙ミュージアム「TeNQ」

東京ドームシアターの中にある宇宙ミュージアム「TeNQ」。

都内にあるので、行きやすいのがいいですよね。

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では今回はこのあたりで。

またお会いしましょう。