「日常」から学ぶ。

「バナナ」から学ぶ。

コロナ禍のため家時間が多くなっている昨今。

生活の中の優先度で、「食」の比重がどんどん大きくなってきています。

できるだけたくさん新鮮な野菜と果物を日常的に摂って、自分の体を作ってくれるものの質を上げていきたいな、なんて思ってます。

そこでスーパーに食材を買いに行ってみると、野菜や果物の値段がなかなか高くなっているますよね、最近。

そんな中、安くて手軽なバナナに目が行きます。

思えば、どこのスーパーに行っても、必ず売っているバナナ。
どの時期にも行っても、必ず売っているバナナ。

他の果物に比べて安くて、栄養価も多くて、しかも食べやすい。
消化も早くて、すぐにエネルギーが得られる。だからスポーツにももってこい。

かつては高級食材だったバナナも、いつの間にか日常の中に当たり前のようにいることに気づかされます。

というわけで、今日はそんな「バナナ」から学んでみましょう。

「バナナ」をまずはちゃんと知ってみる。

「バナナ」というと、黄色い果物を思い出しますよね。

でもそれって、「鯛」と聞いて、鯛という魚一匹を思い出すのではなく、切り身になった状態の鯛を思い出すようなもの。バナナを部分的にしか見れていない状態な気がします。

というわけで、ここではちょっとバナナの全体像を、つまり果物として収穫される前のバナナについてまずは知ってみましょう。

植物としてのバナナ

まず植物としてのバナナを一言でいうなら、バショウ科バショウ属に属する植物です。

でも、そう言われてもなかなかピンと来ないですよね。なので、まずは「バショウ科」について知ってみましょう。

と言っても、バショウ科の植物のことを学術的に言われたところで、きっとより分からなくなるだけだと思うので、まずは画像で見てみましょう。バショウ科の植物は、こんな木なんです。

こんな形をしているバショウ科の植物です。なんだか見覚えがある気もしてきますよね。

このバショウ科の植物ですが、有名なものは3つあります。

  1. バショウ
  2. マニラアサ
  3. バナナ

1つ目のバショウと2つ目のマニラアサは、主に繊維として利用されます。特にマニラアサ(「アバカ紙」とも呼ばれます)はかなり丈夫な繊維が取れるため、高級紙として使われることも多く、僕らの生活の中にも利用されています。例えば、財布の中をちょっと覗いてみると、硬貨と紙幣があると思います。この紙幣は、マニラアサの繊維からできているんです。

そして3つ目のバナナが、果物として僕たちが食しているものですね。今回のテーマはこれ。

ちなみに、昔の日本では、繊維として使われるバショウのことを「芭蕉」、食用に使われるバナナのことを「実芭蕉」と呼んでいました。俳人の松尾芭蕉の名前は、この「芭蕉」から来ています。

食用としてのバナナ

さて、食用としてのバナナについてですが、かなりの栄養素を含んでいます。ざっと箇条書きにすると、こんな感じ。

  • エネルギー:86kcal
  • カリウム:360mg
  • 食物繊維:1.1g
  • ビタミンB1:0.05mg
  • ビタミンB2:0.04mg
  • ナイアシン(ビタミンB3):0.07mg
  • ビタミンB6:0.38mg
  • 葉酸
  • 糖質
  • ポリフェノール類
  • アミノ酸

果物の中でもかなり栄養が豊富です。でも、1本あたり86kcalと低カロリーなのがさらにいい点ですよね。

そんなバナナなので、日本では果物として食べられますが、東アフリカや中央アフリカの中には主食としてバナナを食べている国もあるんです。

「食べるだけ」じゃない、バナナの使われ方。

さて、食用としてかなり有用なバナナですが、実はそれだけではないんです。食用以外にもさまざまな利用がなされています。

バナナの殺菌作用を活かした用途

バナナの葉には、殺菌作用があると言われています。

そこで、バナナを葉をお皿として使ったり、食べ物を包むことに使ったりします。たとえばこんな感じに。

これは以前、シンガポールでカレーを注文したときの写真です。バナナの葉っぱをお皿にして、料理が提供されていました。こういう使い方もあるんですね。

繊維として利用できる

先述のバショウやマニラアサと同様、バナナも繊維として使うことができます。カンボジアでは、日本人の青年(山勢さん)が「ahi | 亜紙」というブランドでバナナペーパーの製造・販売を行っていたりします。

世界のバナナ生産状況

さて、そんなバナナですが、世界のどこで主に作られているのでしょう?

国連食糧農業機関(FAO)のデータを使って、世界のバナナ生産量の多い国を見てみましょう。

順位国名生産量
1インド2910万トン
2中国1330万トン
3インドネシア700万トン
4ブラジル680万トン
5エクアドル650万トン
6フィリピン580万トン
7アンゴラ390万トン
8グアテマラ380万トン
9タンザニア360万トン
10ルワンダ300万トン
(参考)日本32トン
世界のバナナ生産量(2016) – 国連食糧農業機関(FAO)「FAOSTAT」から自作。

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これを見ると、南アジア・東南アジア・アフリカ・中南米といった熱帯地域の広い範囲でバナナが生産されており、一方日本ではほとんど栽培されていないことが分かります。

日本のバナナはどこからきているのか?

では、日本のバナナはどこからきているのでしょう?

これは、e-Statの「農林水産物輸出入統計」を使ってみてみましょう。

順位国名輸入量(数量ベース)
1フィリピン5907.3万個
2エクアドル867.0万個
3メキシコ120.2万個
4グアテマラ70.8万個
5ペルー39.0万個
6コロンビア20.4万個
7タイ16.7万個
8ベトナム15.8万個
9インドネシア6.2万個
10コスタリカ3.8万個
日本のバナナ輸入量(2018) – e-Stat「農林水産物輸出入統計」をもとに自作。

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東南アジア(特にフィリピン)・中南米からの輸入が多いことが分かります。

が、生産量が1位だったインドや、上位だったアフリカからは輸入が少ないことが分かります。これは、そもそもインドやアフリカでは、バナナは国内消費用に作られているからです。

そして逆に、フィリピンをはじめとする東南アジアや中南米諸国では、バナナの生産が海外輸出用に作られたため、日本のバナナ輸入量の上位にランクインしているんです。

生産国で消費されるバナナは質が悪いという現状

さて、上の表で見てきたように、わたしたちが日常的に手軽に食べることのできるバナナは、フィリピンをはじめとする東南アジアや中南米の国々の生産と輸出の上に成り立っていることが分かります。そのことへの感謝の思いは、日常的に少し持っておきたいものです。

ただ、それ以上にひとつ心にとめておきたいことがあります。

それは、輸出国では質のいいバナナは日本などの国へ提供しており、自国の市場には質の悪いバナナが多く並んでいるということです。

たとえば、下の写真はフィリピンのマニラから車で2時間ほどの町の市場の写真です。

このように、輸出国の都心から少し離れた市場ではだいぶ傷んだバナナが並んでいる光景をよく目にします。

僕らの生活の中で、この品質のバナナを見ることってありますか?

きれいなバナナを先進国に送り、残りの痛んだバナナを国内で消費する。バナナは輸出用に生産され始めたとはいえ、少し心にとめて置きたいことのような気がします。

今僕らの快適で心地のいい食生活は、今日までを精いっぱい生きてきた自分たちの努力だけで成り立っているわけではないことを、少し意識しておきたいところです。

補足

上には書けませんでしたが、海外から大量のバナナを輸入している日本ですが、実は植物防疫法により熟した黄色いバナナを輸入することは禁止されています。これは海外からの害虫(チチュウカイミバエなど)の侵入を防ぐためです。

そのため、まだ青くて熟していない状態でバナナを輸入して、国内に入った後にエチレンガスで成熟を促してから販売しています。

エチレンに関しては化学の理解を深められるので、また別の機会に書けたらと思います。

参考資料

最後に、今回の内容をより深く学びたい人向けの参考資料をいくつか挙げておきます。

ではでは、今回はこのあたりで。

またお会いしましょう。